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天長山久國寺

吉元
この寺には岡本太郎が作った鐘があります。鐘のトゲトゲは、人間の手を表現しているらしいですよ
村田
あ~!よく岡本太郎の絵に出てくる、あの、びやーって伸びる感じの人間がいっぱい描かれてる…。
吉元
幸せの鐘。
村田
見た目からは想像しにくい、意外な名称ですね…。

鐘の前に座って

  • 岡本太郎作「幸せの鐘」
  • 岡本太郎作「幸せの鐘」
吉元
毎朝お地蔵さんに賽銭をあげて手を合わせたりしているんですけど、だからって、とくに良いことがあったわけじゃないです(笑) 世の中なんて無慈悲なもんで、お参りしようが地震はくるし、来るものはくるんだろうなって…。たぶん昔の人も、色々なことが起こっても、それでもずっと手を合わせてきた。お地蔵さんは、心のよりどころのようなもので、地域の人々がずっと大切にしてきたんでしょうね。 そういう素朴な、自然と手を合わせるような感覚が、僕も最近になって、なんとなく分かってきたのかもしれないですね。
村田
うんうん。
  • 天長山久國寺
  • 鐘の前に座る二人 岡本太郎作「幸せの鐘」
  • 左:天長山久國寺
  • 右上:鐘の前に座る二人
  • 右下:岡本太郎作「幸せの鐘」
吉元
最近、息が詰まるという感覚がなんとなくあって、ちょっと怖いのは、僕ら人間が、望んでそのようにしている気がすること。建物で例えると、さっきのようなトタンだと、「あんなみすぼらしいものじゃ嫌だから、もっと立派に」といって、冷たい大きい建物を作ったりする。皆でそういう方へ向っているのがちょっと怖いですよね。
村田
“綺麗な建物にする”って大義名分じゃないですけど、そういうふうに言われたら、誰も反対しにくいですよね。
吉元
そうなんですよね。 だから、身近にあるお地蔵さんや手作りの小屋だとか、そういうものに僕は望みを感じるんです。 まぁでも、お地蔵さんにお願いをしても、なかなか聞いてもらえないですけどね(笑)
村田
吉元さんはトタン屋根を見て、可愛いなって感じるとおっしゃいましたよね。建築家の方だと、トタンを見て、こんなんじゃダメだって言う人もいると思います。でも、吉元さんは、地域の人たちの手で残したものが一番尊いというか、気持ちが伝わると感じているのでしょうか。
吉元
そうですね。生きている実感や、物を作った楽しさが見えてくるので、僕はすごく好きですね。 最近、建物ってすごく冷たくて、人を拒絶するようなものになっちゃっているから、もっと、あんな手作りの小屋作りのような感覚を大切にしたいですね。
村田
何かに願うとか、祈るっていうのは、何か対象がないとなかなかできないですものね。
吉元
そうですね。お地蔵さんのように、思いを託せるものや、皆が集まれる、こういう場所があるというのは大切かもしれませんね。
村田
僕は詩を書いているので、「詩は、願いとか思いとかを付けるんですよね」とよく聞かれます。 でも、そういう思いが重くくっついちゃうと、詩として作れなくて、変に思い入れだけになってしまう。 「詩は、もうちょっと冷たいものなんですよ」と言うことがありますが、でも、何か、思いを寄せる対象がないと、言葉も投げられないと思うんです。
吉元
僕らはどうしても建物を作る方なんで、作ったものを言葉で説明するということは少ないですが、興味はありますね。よく、難しいことを言う先生は、「建築を言語化して」と言われるんですけど、あの…ちょっと、難しいなぁって。
吉元 学 村田 仁
村田
屋根に草が生えている「母の家」を、ワークキューブさんのホームページで拝見しました。
吉元
あれは、僕のおふくろの家です。 花や草が屋根に生えていることで、その光景が家の前を通る人の目にとまって、おふくろとの会話が生まれるきっかけになればと、そういう思いで作りました。なかなか難しいですけどね、草の手入れは。この猛暑で枯れたりして(笑)
村田
あはは…。そういう大変さもあるんですね。
吉元
母はね、ここでずっと生活してきたんですよ。だから近所のつながりもあるし、知人もたくさんいる。だからこの場所で建替えようと思ったんですよ。 でも快適な空間をつくってしまうとね、家の中にこもっちゃうじゃないですか。年寄りだし、動くのも大変だし。だからね、母の生活における意識を常に外に向かわせたかったんですよ。 南側の道路に大きな開口をつくり、外を歩いている人が気軽に入り込めるようにしました。 また、緑化している屋根に目がいき、手が届くように軒下は1.6m にしてあるんですよ。
村田
かがまないと入れない高さですね!
吉元
でもその分、コミュニケーションが生まれるんですね。 しかも、ちょっと低いおかげで、開放的でありながらプライバシーも守れる。
村田
一石二鳥ですね。
吉元
母の存在を周囲に伝えることがね、人とのつながりを生み出す第一歩なんじゃないかと思うんですよ。気軽に窓をくぐって、「天気がいいねぇ、今日は調子どう?」といった感じに。
村田
建築って、どちらかというと”建物” というハード的なものだと思っていたんですけど、吉元さんのお話を伺って、街や地域、人にとっても、可能性のあるものなんだということがよく分かりました。
吉元
“状況や空気みたいなものをどうデザインするか” ということが、大きなポイントなのでしょうね、きっと。まだまだ奥は深いですけどねぇ。
村田
とても勉強になりました。
吉元
今日は、朝早くからありがとうございました。
村田
こちらこそ、ありがとうございました!
吉元 学 村田 仁

今回のレポーターを務めた建築家

吉元 学(よしもと まなぶ/ Manabu Yoshimoto)

吉元 学(よしもと まなぶ/ Manabu Yoshimoto)
株式会社 WORK○CUBE(ワーク・キューブ)
名古屋市昭和区福江 1-7-2
TEL 052-872-0632 / FAX 052-872-0633
http://www.workcube.jp
あなたがごく普通だと思っている、今の暮らしの中からオリジナリティーを抽出し、ごく普通でありながらあなただけの住まい作りのお設計ができればと常々考えています。お互いの理解のためのツールと考え、模型をテーブルの中心にすえて家創りを進めていきます。
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今回のレポーターを務めた詩人

村田 仁 	(むらた じん/ Jin Murata)

村田 仁(むらた じん/ Jin Murata)
被災地への安否確認を読みあげるテレビ放送を呈示する「言葉で願う夜」('05)、クリスマスのコンビニ内にて詩を放送する「おじいさんに会いに行く、冬。」('04)、美術館内を歩き回っては詩をつくり、読み上げては書いてその場に置いていく「徘徊する詩 "愛の前"」('09)(「 愛についての100の物語」金沢21世紀美術館)など、行為による詩を展開。また、中高生ら参加による「声変わりの日」('10-11)三重県立美術館。小牧市文化振興課主催絵画鑑賞講座での「絵画へラヴレター」('12)など、詩のワークショップも多く開催。2012年は 名古屋市 長者町トランジットビルの一室で、アーティスト四名による「アートセンター[Yojo-Han]」を始動させ、詩の教室「si-ka-ra」を開講。

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